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フクロウくんのポンコツ的生活
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若い詩人と固い種子
2006年 06月 12日 |
人や鳥や獣たちが
柿の実を食べ、種を捨てる

-これは、おそらく「時」の計らい

種子が、かりに
味も香りも良い果肉のようであったなら
貪欲な「現在」の舌を喜ばせ
果肉とともに食い尽くされるだろう。
「時」は、それを避け
種子に好ましい味をつけなかった。



僕が好きな吉野弘さんの言葉だ。

詩人の目線は、冷静。
面と向かって談笑しながら、相手の後頭部を見つめることができる。

学生時代のある親友で、初対面の人に「僕は詩人です」って自己紹介する奴がいた。
その若い詩人は、”ただ分析する”目が充分開いていなかった。
人が”変化する生き物”なことを知らなかった。
時間の軸の中で思いやることができなかった。
だから、人をいっぱい傷つけて、自分もいっぱい傷ついた。
詩人じゃない僕たちも同じだった。
多分、若かったから。

そして、体内の固い種子をもてあましている。
詩人だなんていっても、その実、弱っちくて、つるんで強がってみたのは、それだ。
当然、詩人でもなんでもない。

若い頃は、自分の中のこの種子に、いつ気付くかだったような気がする。
若いとはいえなくなった立場で振り返ると・・・(汗)。

彼の固い種子は、外界を通り越して、宇宙と繋がったせいで、「頭に稲光が落ちた」とかいって、少しの間、病院のお世話になった(^^;。

僕の固い種子は、・・・どうなってるのか分からない。
今のところ、病院のお世話にはなっていない。
ただ、何かにぶつかるたびに知覚できるのは、他でもない、自分の中にある種子の存在。
いろいろ不安や不満やトラブルが起こるたびに、ときには愉しい談笑の影にも、普通の毎日にも、ふとよぎる種子の存在。

僕がもしも、植物の種子だったとしたら。



固い種子ー
「現在」の評判や関心から無視され
それ故、流行に迎合する必要もなく
己を守り
「未来」への芽を
安全に内蔵している種子。

人間の歴史にも
同時代の味覚に合わない種子があって
明日をひっそり担っていることが多い。



僕の種子は、酒漬けになって発酵してしまっているんじゃないかと、しょっちゅう悩むけど・・・。
僕は、吉野弘さんの語りかけてくる目線の位置が大好きなんだ。