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フクロウくんのポンコツ的生活
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馴染みの親父が逝った夜
2007年 05月 08日 |
馴染みの店の親父が、脳溢血で逝ってしまった。
まだ65歳だった。
その夜、僕は山の中で飲んだくれていた。

馴染みの親父は、僕がこの町に住み始めて最初に入った居酒屋のマスターだった。
ずんぐりしていて、つるっぱげの、少々エッチないい親父だった。





20代の僕の阿呆な飲み方も、「(若いときは)そんなもんだ」と言っては笑い飛ばしてくれた。
家族経営のお店で、カウンターの中にいる娘が作ってくれた焼酎のお湯割りを飲むのが大好きで、プロ野球を見ながらチビチビ焼酎を煽っては、お客と巨人の応援をしている人だった。山登りも好きだったから、僕とはいつも楽しい山の話をしていた。
マスターの若い頃は、どんな人だったのかは聞いたことが無いからよく分からないけど、意外と危ないトコ生きてきた人だったんじゃないかなって、何となく思っている。

馴染みの親父が逝った夜、僕は山の中で飲んだくれていた。
僕が飲んだくれているのはよくあることだけど、実は僕はその日の2、3日前からなんとなく胸がモヤモヤしていた。どこと無くココロの居詰りが悪いようで、フワフワした気分だった。
今日、仕事帰りに繁華街を通ったとき、そのお店の電気が消えていたから、僕はひと目で何が起こったのかを了解した。

人と人は、ある日から急に会えなくなる生きもの。
そう思っても、あのお店でもうマスターの半分聞いてくれているのか分からないような会話をもうすることは無いんだなぁ・・・、そう思ったら、涙は出ないかわりに、多分、それ以上に悲しくなった。人が生きることって、そこで家族が年をとって、子供が育って、ゆっくりと自分の仕事を失ってゆくその流れに他ならない。前の日まで元気だった人が、一緒に頑張ってきた家族の前から急に姿を消してしまうなんて、何て悲しいことなんだ。仲の良い家族で奥さんや娘達の悲しさが、僕なりにぐっと胸に迫ってきて、やるせなくなる。


マスターはその店をもう娘達に譲り、自分はただの調理人の役を担っていた。
だから僕は、その店でつまみを頼むとき、マスターのタバコが消えそうなときにしたり、プロ野球のゲーム内容(勝敗)がほぼ決まったときにするようにしていた。何となく、自然にそうするようになっていた。理由はよく分からないけど、まあマスターが野球見たいのかなと思ったり、タバコ吸いたいのかなって思ったときは、そうしていただけだけど。僕とマスターは、別にそれ以上の関係ではない。だからそんなに悲しむことも無い、とも思える自分はここにいるんだけど、夏の夕方、お店の角にちょこんとしゃがんで夕涼みをしながらお客さんが来るのを待っているマスターの姿を思い出すと、もう会えないことが悲しくて悲しくて仕方が無い。要するに僕は、マスターのことが好きだったんだ。


人は面白いくらい悲しくて儚いから。
言葉を整理し始めて、ゆっくり涙が出始めてきた。


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by bigbirdman | 2007-05-08 01:16 | 飲み屋関係 |