人気ブログランキング | 話題のタグを見る
フクロウくんのポンコツ的生活
musisasare.exblog.jp
外洋観察(ちょっと長いです。)
2006年 06月 25日 |
外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_22592491.jpg
出発は、7:50。快晴だった。
漁港には知り合いのヨットマンが偶然居合わせていて、5人くらいの人に見送られた。
「気をつけて行ってこいよ~」
「生きて帰ってきてね~!」

「当たり前だ(^^;!」

結局、移動距離の長さと積載量の都合で、イスラエルから来たH博士、地元の有識者Sさん、フクロウ、そして船頭さんの4人で沖に出た。(カメラ機材をそれぞれが持ち込んだため、荷物が結構あったから)。よめさんと通訳のKちゃんは、このあとそのヨットマンさんたちのご好意で内湾をクルーズして、バカンスして、イエイ♪だったらしい。何て奴らだ!羨ましい。。

船は、外洋目指して快調に進んだ。養殖のブイ(黒とかオレンジの ボール型の浮き)を傍目にひたすら沖を目指して進んでゆく。僕が通訳代わりだったんで(爆)、少し緊張していた。前日のお酒が少しだけ残っていたので、幸い気楽な心持ちが続いていたのかもしれない。
同行したSさんは、長年三陸の海鳥・山鳥を観察し続けてきた、沿岸きっての知識人の方。僕もお会いするたびに様々な情報を教えていただくのだが、多すぎて憶えきれない(ダメじゃん)。このSさんが今回同行してくれなければ、この観察は味気ないものになったと思う。

外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_23243669.jpg
沖へ出ること40分。陸地が遥かかなたに見える。水平線。「とうさん、地球は丸かったわけで。」「でも、ちょっぴり不安な気持ちにもなるわけで。」ココロの中で、今日の僕はなぜかジュンになっていた。
漁師さんが、「こんな凪ぎは滅多にないよぉ。」と、岩城晃一風に微笑みながら爽やかに語った。このとき4人ともココロの中で”それはオレの日頃の行いが良いからだ”と思った(はず)。

「鳥が少ないね」H博士は、揺れる船の上で遠くの水平線を舐めるように双眼鏡でサーチしながら、僕に呟いた。「そうですね、普段この海域は”突きん棒漁”の船が広く展開していて、そのときは漁船の周りにオオミズナギドリやカモメ類が群がってくるんです。でも、今日は日曜日。漁船が鳥を呼ぶ。この法則からは、生憎外れてしまっていることが原因でしょう!」・・・と、英語で言いたかったんだけど、当然そんな語彙力が無いから、「そうです。この辺は全然鳥が見当たりません。」としか言えなかった。全然言いたいことと反対のことを言ってしまった。まるで好きな女の子に嫌いだと言ってしまう小学生のようだった(ちょっと違うけど)。
外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_0165292.jpg
H博士は、目の観察者だった。それもあんなに目の利くバードウォッチャーを僕は今まで見たことが無かった。遥かかなたの点を見つけると、即座に種類が分かった。あのゴマ粒で種類が分かるのは、飛び方や体色の見え具合からの識別点が、しっかり頭に入っていることを意味している。目の情報から、種名を口に出すまでのレスポンスの速さで経験が分かる。H博士はプロだ!紛れも無く超プロ!車で言えば、緑ナンバーだ。
ちなみに僕は、海鳥なんてキチンと見た経験が無いに等しい。双眼鏡でじっくり見て、”ココがコウで~、・・・コレがコウ。”と記憶して、忘れないうちに図鑑をパラパラ・・・。でも、海鳥のページはあんまり読み込んでいないから、”アレ?どのページだっけ?”と焦っているうちに、さっき覚えた特徴を忘れてしまう(T T)。このパターンが、数回あった。典型的な初心者です。車で言えば、若葉マーク。。
もう一つの観察者は、”耳の観察者”。
森や川原を歩きながら、鳥の鳴き声で居場所や種類を識別する。
でも、海鳥の観察者は、やっぱり目の観察者だった。それも凄腕の。感動した。

外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_0265585.jpg
さて、この船で僕は、鳥を呼び寄せる餌を作る役目を仰せつかっていた。
前日用意したサンマ、ナンプラーは、そのためのものだ。
”解凍サンマをナイロン網に入れて、上から木槌でガンガンガンガン叩く。そして、キュッと縛って沈まないようにブイにくくりつけて海に落とすと、しばらくして鳥がやってくるってぇ寸法よ!”
”するってぇと、アレかい?ナンプラーは、サンマの油に付け加えるスパイスみてぇな役割てぇことだな!”
”お、分かってるねぇ。そういうこと!”
半信半疑な僕。Sさんは、そういう話を聞いたことがあると、僕に教えてくれた。この作業のせいで、手が臭くなってしまって写真を撮る頻度がガクッと落ちてしまった。まぁ仕方がないけど。。

この作業の途中で、少しはなれた海上にサメのようなヒレが浮かんでは沈んでいた。
僕は、最初に見たとき”え!やだな~”って思ったけど、H博士はすぐに「Oh,SunFish!]って教えてくれた。サンフィッシュは、まんぼうくんのこと(^^)。途端に僕は明るくなった。先生は、続いてサンフィッシュについて、いろいろ教えてくれた。「これはね、とてもキュートな魚でね、世界的には数がとっても少ないんだ。だから、保護の網を掛けている魚なんだよ・・・」

好事、魔多し。
・・・このとき、事件が起こった。
外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_0522420.gif




ドゥシュッ
外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_0544065.gif

漁師とは、実にも本能的な生き物・・・。
船頭さんの熟練の槍さばきで、マンボウくんの脇腹にカギが突き刺さった!
「あ!」
「ああ!」
ショックで口が聞けなくなってしまったH博士。
何が何だか分からないまま、マンボウを引き上げようとするSさんとフクロウ。
僕は、まんぼうの鮫肌で腕を引っ掻いてしまって、結構出血してしまった。
結局このまんぼうは、重すぎて引き上げられず、おいしい部分だけを切り取って海に投げられた。この辺では、食べものだったのです。まんぼうは。
あとは、ご想像にお任せします。
いや~、食習慣でこんなに気まずい思いをしたのは初めてだった(^^;。
船頭さんも悪いことしたな~って思ったらしく、みんなに缶コーヒーを振舞ったり、まんぼうの刺身を塩水で洗って一人一人に「食べて♪」って渡したりして(逆効果だっちゅうの!)、優しくしてくれた。。通訳さんの話だと、H博士、今日岸に着いてみんな解散した後、ボソッと呟いたそう。
「僕、もうベジタリアンになりたい。。」
気の毒すぎる・・・。

さて、こんな出来事もありましたが、何とかみんな気を取り直して観察続行した。
いよいよ海へ、フクロウ努力の結晶”スペシャルさんまミンチ(ナンプラー風:正確には少しだけ、しょっつるを使った。家に残ってたから)”を投げ込んだ。
さっきのまんぼうの刺身も良い油が出て海に浮くから使ってみてとH博士に頼まれたので、それも投入した。
ホントにこんなので大丈夫かな~って疑っていた僕。
しばらくして、あっさり一羽やってきた。
外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_11178.jpg

「何、ごはん?」
ハ・ハイイロミズナギドリじゃん!(結構めずらしい)
謙虚で勉強熱心なSさんも、
「いや~、すごいすごい(笑)。面白いね~!」
とご満悦(^^)。
幸せな写真撮影タイムに移った。僕は普通のデジカメしか持ってないけど、SさんやH博士は1眼レフデジカメでバシバシ撮りまくっていた。よーし、オレも負けずに撮るぞ~といきたかったのですが、サンマの切り身を作って、来た鳥が逃げないように餌付けしなくちゃならなかったから、やけになって切りまくって投げまくってたら、今度はアホウドリがやって来た!
外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_1171587.jpg

こいつは、クロアシアホウドリっていう名前。羽を広げると2m以上もある超デカ!
外洋性の鳥は、(種によっては)人をあんまり警戒しない。お鳥よし(お人よし)だ。
ホントすぐ近くまで来て僕たちに挨拶してくれた。
「ブォ!」(こんな声で鳴くのか・・・)
そして、いたずらっこだ。
外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_1202554.jpg

引っ張るな~!切れますがな!(そして、サンマが取れないと分かると、むくれて帰っていった)
外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_1264491.jpg

(↑こんな望遠レンズを、三脚無しで撮影に使っているH博士。)
外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_1285655.jpg
いや、ホント。海からの観察をこんなに愉しんだのは、生まれて初めてだった。
外洋の寂しさ。開放感。
まんぼう、イルカ、アホウドリ。

何が起こるかわからないっていう今日のことは、今はまだ、どういうことなのか意味を掴みきれていない。夕方家に着いて、少し眠ったんだけど、すぐには寝付けなかった。
さっきまで興奮していたんだと思う。
(今度の水曜日まで、H博士はこの町に滞在する。まだまだ面白いことがありそうだから、仕事が終ったら、先生のいるホテルに遊びに行こうと思う。)

外洋観察(ちょっと長いです。)_e0029553_1335826.jpg

魚臭くなったけど、充実して岸に向かったんだ。